最終面接

今日の午後は人権学習です。内容は恒例の小林春彦さん講演会です。もう何年来ていただいているかなぁ。
とにかく授業を3発終えて、準備をしようと思ったら、体育館、授業で使ってた(笑)。まぁ時間ができたってことです。
少しメールのやりとりなんかをして、駅まで迎えに行って、しばし四方山話。そうか、視界の左が認識できないって、そういうことか。「働」を見たら「動」になって、「動」に集中したら「カ」になる。認識のスポットの左が欠けるのね。はじめて「なるほど」と思いました。
で、準備開始です。おとつい機材の準備はしておいたので、けっこうサクサク進みました。昼休みがかなり時間ができたので、しばし体育館でボー。
で、講演開始。わたしはおべんとを食べに行って、速攻体育館にもどって一緒に話をききました。
ええなぁ。とにかく「押し」がない。あくまでも自分のぐるぐるを話されます。そして、そのぐるぐるの中で考えたことを淡々と話されます。自分のしんどさをとても相対化しておられるので、そのしんどさがこちらまで届かない。それがいい。だから、本質がわかる。
ハルヒにしろゆきみちゃんにしろ、なぜこの人たちに来てもらうかというと、自分の問題を通して社会のありようとか構造とかを語ってくださるからなんですよね。自分話で終わらない。
てことで、お話が終わったところで、そんなあたりをひとことコメント。いや、コメントしなかったら子どもたちは気づきませんからね。
で、小林さんを京都駅まで送る道すがら買い出しをしたりして、京都タワー下でバイバイ。なんでも「舞妓はんひぃ〜ひぃ〜」を買われるんだとか。
さて、家に帰ったら3分間スピーチの原稿づくりです。残された時間は2時間半。できるか?
与えられた字数は概ね1300字です。そこになにを入れるか。つくってはしゃべって時間計測をし。アカン、3分30秒。みたいなのを繰り返して、3分5秒あたりまで追い込んだところでビールタイムです(笑)。いや、滑舌も大切だし気分転換も大切です。
そして最終面接開始です。こんな話をしました。

はじめまして。京都で公立高校の教員をしているいつきと申します。
わたしは37年間の教員人生のほとんどを人権教育の担当として過ごしてきました。また仕事から離れて、例えば在日外国人生徒たちが集まる交流会を1994年から開催してきました。交流会の場で、同じ立場の生徒たちが語りあい、自分とは何なのかと自らに問い、自らの姿を見つけ、そしてありのままの自分で生きていく生徒たちに出会ってきました。そしていま、もっとも力を入れているのはトランスジェンダー生徒です。なぜなら、わたしはトランス女性であり、トランスジェンダー生徒たちは自分の後輩にあたるからです。
わたしにはいわゆる「組織」はありません。トランスジェンダー生徒交流会もスタッフがいるわけではありません。また、金銭的な基盤があるわけでもありません。毎回の交流会も、誰が来るかわかりません。もっとも参加者が少ないときは、わたしとトランス女性の生徒とそのカレシ、そして引率教員の4人だったこともあります。しかし、現在は保護者やサポーターを含めると毎回50人ぐらいの参加者があります。それは、交流会を必要としているトランスジェンダー生徒や、その保護者の存在があるからであり、交流会をサポートしたいというたくさんの卒業生や大人達の思いがあるからです。そういう人たちの思いの結晶が交流会であると思います。わたしの役割は、そんな人びとをつなぐハブであると考えています。
今回、事務局の方から「ビジョン」についても話してほしいと言われました。とても困りました。なぜならビジョンはないからです。考えていることはひとつだけです。それは、トランスジェンダーをはじめとするマイノリティの子どもたちが幸せになることです。でも、その幸せは誰かが与えてくれるわけではありません。自らの力でつかみとる以外方法はありません。交流会は、その力を互いに与えるところだと思っています。だから、これからも地道に交流会を続けること、そのためにも、人と人とがつながるハブとして動き続けることが、自分のミッションであると考えています。
最後に、今回このような機会を与えていただきありがとうございます。と申しますのは、昨今トランスジェンダー、特にトランス女性へのヘイトが激しくなっているからです。トランスヘイターたちは、トランス女性は女性ではないとするだけでなく、女性の敵であるとまで言います。そして2年前には「ツイッターのせいで高校からの友達が死んだ」という匿名日記への投稿がネット上を駆けめぐる事態になりました。このような中、みなさんがわたしを選んでくださったということは、とりもなおさず、フィッシュファミリー財団あるいはCCJA実行委員会はトランス女性は女性であると考えているという力強いメッセージを発してくださっていることになるからです。そしてそのメッセージはトランスジェンダー生徒、特にトランスガールたちを勇気づけることにつながるからです。
最大限の感謝の気持ちを込めて、わたしの話を終えさせていただきます。

うまく3分間で話せたらしいです。選考委員長が「チンが鳴る前に終わりましたね」と微笑んでくださいました。その後、12分間の面談。フルボッコ大会のトラウマが出てくるかと思ったけど、そんなこともなく。うーん、ただ、もしかしたら期待に添えなかったかもしれないです。それは、わたしが目指している方向が拡大ではなく泥沼化だからかもしれません。
まぁなんにしろ、終わりました。
「東京には来られますね?」
と聞かれたので
「11時まで授業があるので1時はムリです」
と答えると、みなさん、和んだ笑い声を出されました。うん、よかった(^^)。