今年のGID学会については、密かに決意していたことがあります。それは「ロビー活動をしない」です(笑)。これは、2年前の反省なんですがね(笑)。
てことで、学会報告です。
- 開会の辞…第11回大会会長 小澤寛樹
まだはじまったばかりで上の空でしたm(_ _)m
- 一般演題1…座長 池田官司
池田さん、やっぱりかっこいいなぁ…。
朝、いきなり越本さんからあいさつをされてしまって、えらいドギマギしてしまいました^^;;。そういえば、去年の懇親会でお会いしたなぁ、と。
さて、内容ですね。「ドロップアウトってなんやねん」と思ったら、そのまんま、途中で受診をやめてしまった人のことでした。こういう調査・検討はなかなかおもしろいですね。それにしても、若年層FTMの人数の多さは異常ですわ。で、ドロップアウト率もなかなか高い。逆に言えば、それはそれでいいのかも。
実は質問をしたかったんですが、ここでもまだエンジンがかからなくて、質問の機会を逃してしまいました。まぁ、他にもターゲットになる同じような演題があるからいいかな(笑)。
と思ったら、いきなり後ろの方から罵声が飛んできたんですが、あれはいったいなんだったんだ?少なくとも、長崎大学への質問ではなかった気がするんですが。池田さん、「コメントということですね」と流しておられました。
さぁ、O田さんだ!
まずは、関西医大病院のジェンダークリニックの歴史みたいなところから入っていきました。わたしが受診したのは、2004年1月29日*1なので、受診者が激増するほんの少し前だったみたいですね。考えてみたらのどかだったものなぁ。
で、内容は、ひとつはPSWがとても有効に機能しているということ。これはほんとうに実感です。Y田さんがいることが、「まんまるの会」の維持運営にもとても有効に機能しています。
もうひとつの内容が、実はこの間の受診の時にも話していた内容なんですが、「大学病院は変化する」ということにかかわっての話です。具体的には、現在精神神経科はとても充実していますが、他の科についてはいささか厳しい状態です。で、これをなんとかできないかということです。具体的には、他の病院との連携をスムーズにできないか。O田さんとしては、適応判定なんか野書類の標準フォーマットをつくって、それを持っていくことである病院から他の病院へスムーズに移行していく方策は探れないかということでした。
もっともこれ、どうも医療者側に壁があるみたいなんですね。「他の病院の適応判定をうけとるのは違和感がある」みたいな。でも、そもそもガイドラインの第2版の時点で、すでに地域でのチーム医療みたいなことはうたわれていたわけで、これ、実現してほしいですねぇ。
- 「3.民間精神科病院におけるジェンダー外来開設の試み‐9ヶ月間の報告と今後の課題について‐」吉川有美
ひとことで言って、すごくていねいにやっておられるなぁという印象。例えば、待合室での呼び名をどうするかなんかについては、受診時に本人の要望を聞くなんてことをやっておられるんですね。思わず隣に座っていたSんちゃんと「優しいなぁ」とつぶやいてしまいました。
かつてこういうの、G研で話題になりましたよね。そういう話をきちんと踏まえておられるようです。なんでも、一回30分ほど時間をかけているそうです。
針間さんの質問「それだけ時間をかけてペイするんですか?」
答え「通常の外来が終了した午後の時間を利用してやっています」
針間さんの再質問「てことは、ただ働きをしておられるということですか?」
答え「勤務時間内ですから、ただ働きではありません」
笑いました。
にしても、演題発表、女性が多いのがいいかも…。
「4. 性同一性障害外来を受診した未成年患者についての検討」山田妃沙子
さぁ、Y田さんだ!早い話が、O田さんの話に出てきたPSWの方です。
この演題は未成年患者にしぼっているので、モロにわたしのターゲットとかぶっています。ここでもFTMの数多すぎ!もともとstanderd of careあたりの数字でMTFが多いのもイマイチ納得がいかなかったんだけど、逆にFTMが多いのも納得がいかないですね。割合的に同数なのが妥当なんだと思うんだけど。まぁ、社会のありようを写しているんだとは思いますが…。
で、越本さんの演題発表の時にできなかった質問を、こちらのほうでやることにしました。
「はい!」と手をあげると、Y田さん、「えぇ〜…」となんとも言えない顔でこちらを見られます。すみませんすみません。にしても、池田さん、わたしをさす時に「D肥先生」と名指しでしたよ(笑)。
質問は3つ。「若年層受診者の受診動機」「FTMが多い理由について(印象で)」もうひとつ、なんだっけ(笑)。
関心があったのは受診動機なんです。学校が「行け」と行ったみたいな話が出てくる可能性があるかなぁと。実際には「本人が行きたいと言った」というパターンと、不登校みたいな話から「とりあえず行かせよう」みたいなパターンがあるみたいですね。FTMの件については「活発」みたいな話がありましたが、まぁそれもそうか…。
- 「5. 一般男女及びGIDのMtFとFtMのTCI検査結果の比較」宮島英一
これ、爆笑でした。
検査結果は、MTFの一人負け。MTFは、どうも妄想しがちで協調性がなくて内向的みたいです。に対して、FTMは、行動的で協調性があってといいことずくめ。まぁわからないこともないですがね(笑)。
これが、FTMだからMTFだからなのか、トランスというかGIDが、社会における男性・女性の求められる性役割を極端な形で表現してしまうからなのかは、ちょっと検討する必要があるんじゃないかなぁとは思うのですが…。
- 一般演題2…座長:井上統夫・野口 満
- 「6.地方都市における性同一性障害に対するホルモン治療の現状と問題点」井上統夫
すみません、集中力が切れて(笑)、ちょっとロビーに待避していました。やっぱり休憩がほしかったです…。
ちなみに、こちらも質問の時間に、後ろの方から罵声が飛んでいました(笑)。コメントだったらしいです。
- 「7.性同一性障害のホルモン動態に関する研究‐唾液中の複数ホルモン濃度一斉測定法を用いて-」正岡美麻
え〜と、アンドロゲンがどうしたこうしたという話で、よくわかりませんでした^^;;。まぁ、簡単に言うと「予想通りでした」という結論だったみたいです。
ただ、毎日ホルモン濃度を調べることの有用性みたいなのはあるみたいですね。
で、中塚さん@岡山大学の質問がなかなかよかった気がします。結局、ホルモン濃度を調べても、本人のレセプタなんかの影響が大きいから、それだけではダメなんじゃないか?みたいなことだったと思うのですが、それはその通りなんじゃないかと。てことは、ホルモン濃度で考えるんじゃなくて、別の指標*2で考えた方がいいのかもしれないですね。
にしても、難しくてよくわかりませんでした。
- 「8.ナグモクリニックにおけるGID患者に対する包括的医療への取り組み〜第3報〜」山口 悟
なんちゅーか、この人は、やっぱり「Yes!◯◯◯クリニック!」みたいな感じですねぇ。O田さん曰く「ラグビー部とヨット部の違いですよ」とのことですが(笑)。
それを象徴したのが、プレゼンテーションの違いですね。いままでは、単純な文字のみとか、せいぜい数表・グラフ程度だったのが、いきなり表紙のところにご自分の写真が入っています。すごいよ…。
で、内容としては、いままでのとりくみの経過と、名古屋院ができるということです。にしても、外科的な部分は、ほんとうにナグモ一色になりそうやなぁ…。
- 「9.札幌医大における性別適合手術の初期経験」舛森直哉
そうか。MTFのSRSは、だいたい6時間程度。入院日数は12日程度なんですね。にしても、足の固定がたいへんらしいです。まぁ、6時間もあの姿勢だときついわなぁ…。
- 「10.岡山大学における性同一性障害の治療の現状」渡辺敏之
術式についての話でした。一般演題1が精神科領域、2がホルモンや手術といった外科的領域の話でわかれていたみたいですね。関心はあるけど、わたしらにとっては「だからどうせいっちゅうねん」みたいな話でして、まぁ聞くしかないですわ。
にしても、件数が増えることでずいぶんと技術的にはあがっているんだろうなぁという気がしました。ちょっと安心かな(謎)。
- シンポジウム1
- 「望みの性別で暮らしていくために‐当事者の社会適応とサポートシステム‐」座長:石丸径一郎
- 「精神科外来受診者における性同一性障害者のRLEと臨床的特徴」針間克己
さぁ、真打ち登場です!
まずは、RLEの間違った用例についてコメント(笑)。その後、ホルモンとカムアウトとRLEの相関関係についての話が出てきました。
簡単に言えば、FTMはホルモンをやっていてカムアウトしていたら最強であるということです。それに対して、MTFはホルモン&カムアウトは必要条件でしかないという感じですね。
- 「当事者が社会の中でよりよく暮らしていくために」上川あや
なんか、今回のメンバー見ていると、「ハートをつなごう」みたいな感じですよね。まぁ、わたしはあちらの方はクビになっているから関係ないんですが(笑)。
まずは、特例法以前と以降のトランスジェンダー・GIDをめぐる状況について、簡単にガイダンス。で、GIDの「人権」が、とりあえずおおっぴらに言えるようになった最近、あらたに出てきたのが当事者の中野「困った人たち」です。これを実例をあげて説明。はっきり言って「あるあるある」という感じ。こういう人たちが出てくる要因のうちのひとつとして、自助グループの衰退があるのではないかという問題提起がされました。
でも、それだけで終わらないバランス感覚が上川さんですね。「人権侵害については、こんな相談場所がありますよ」という紹介がいっぱいされました。さすがは議員さんです。
- 質疑応答
トップバッターは、Sやかさん。あれ、質問内容なんだっけm(_ _)m
続いて、順子姐さんの登場です。やっぱり、MTFはパスの問題が大きいのではという指摘。それに対して、針間さんは「はじめは「これは無理だろう…」と思っても、何回か受診されたら「いけるじゃん」と思えるようになるのが不思議」との返事。まぁ、「◯◯も3日もすると慣れる」ということでしょうか(笑)。さらに上川さんからも「結局は、人間としてどうであるかということが大事」という、「はーとをつなごう」の第1弾の時の〆の言葉をここでも言われました。に対して、順子姐さんは、「それはそうなんだけど、そういう人間関係のない人が、例えばトイレであった時にどうかというような話なんですよ」みたいな返しをされました。結論は…。忘れた^^;;
で、またまたわたしも質問というかコメントというか。
ひとつは、従来のような一般的に公開している自助グループじゃなくて、病院単位での「受診者の会」もけっこう有効に働くのではないかという提案です。これ、もちろん病院を受診している、あるいは受診する意志がある、あるいは受診しようかどうしようか迷っている人*3にしか有効ではないのですが、そういうものもあればいいんじゃないかということなんです。もうひとつは、カムアウトの暴力性。なんか最近のカムアウトって、他者とつながり直すためのものじゃなくて、自分の権利を主張し通すためのものになっている気がしてなりません。まぁそんなことをちょこっと提案。それにともなって、学校における診断書の扱い。針間さんは「その程度のことでいいならばと最近思うようになって、診断書は出すことにしました」と優しいことを言っておられて、それはそれでいいのですが、それを必要にしてしまうと、それなしには動けなくなってしまいます。昨今の初診待ちの状態では、診断書が出る頃には卒業していたみたいなこともおこりかねないし、そもそも診断書がないといけないということそのものが間違っている気がするのですがね。
- 教育講演「わが国における性同一性障害‐これからの課題‐」座長:小澤寛樹
- 講師 山内俊雄
まずはツッコミから。「わが国」はやめましょうよ。「わが国」が必ずしも日本をさすとは限りませんから。やはり「本邦」とか「この国」とか、率直に「日本」とかにしたほうがいいと思いますよ。
なんてこと書いても、山内さんはこんなところ読んでないだろうけど(笑)。
内容は、GID医療に関する外国(欧米)と日本の長い長い歴史。あとは、そこでの到達点と課題みたいな話です。ん〜。長すぎてよくおぼえていないです。
にしても、「中核群」と「周辺群」ってまだ使ってるんですかねぇ。隣に座っていたO田さんに「診察の時にそこらの鑑別ってしてはりますか?」と質問したら「いや、してませんよ」と明快な答が返ってきました(笑)。で、「周辺群をどうするかがこれからの課題のうちのひとつ」みたいなことを言っておられたけど、もしかしたらその人たちって「大きなお世話」と思っているのかもしれないんだけどなぁ…。
てなことで、1日目のプログラムは終了。