本になる(2日目)・本になった人々

リビングライブラリーって、読者の方々もたくさんの出会いをされますが、「書庫」にいるわたしたちにとっても、本仲間同士ですごい出会いができます。
ちなみに、書庫から出る時に「いつきさん、読者の方が来られました」とか言って呼び出されるんですが、つい「ドナドナドーナード−ナー♪」とか歌ってしまいました。そんな感じなんですよね(笑)。
例えば、高次脳機能障害の人。18歳の時に脳梗塞で倒れて、その後視野狭窄と「認知」にかかわる障碍が残ったそうです。「認知にかかわる」ってどういうことかというと、例えば「落ちる」という認識は通常は「下への移動」ですが、その方の場合は「奥への移動」が落下感覚になるそうです。なので、長〜い廊下とかメチャメチャ怖いそうな。じゃぁ、落下方向はどう認知するかというと、左に移動するそうな。さらに、文章を読んでいると左が欠けるので「働く」が「動く」に見えるそうな。それが顕著なのは、英語。「she」とか「the」とかは、すべて「he」に見えるわけで、「なんか、ヒーヒー言ってますよ」とか笑ってました。
この人、現在大学入試のための浪人中なんですが、試験のための「配慮」がないのでものすごくしんどいそうです。そりゃそうです。もしも読みあげソフトが使えれば充分に対応できる学力があるにもかかわらず、大学入試センターは「マニュアルにない」という一点で配慮なしにしているそうな。そりゃマニュアルないです。こんな人、そうそうたくさんいないからね。でも、それっておかしい。少数だからこそ対応しなくちゃならないわけで。
この人の弁。
「入試の目的には「高校卒業程度の学力があるかどうかを調べる」と書いてある。で、試験っていうのはインプット→思考→アウトプットというプロセスを経てされるんだけど、問われているのは「思考」の部分のはず。インプットやアウトプットは問われないはず。にもかかわらず、そこのところでつまづいてしまう。これはおかしい」
これ、新渡日の子どもたちについても同じことが言えるよあなぁと思ってしまいました。

ホームレスの方もおられました。
「橋の下に住んでいると、わずか数センチで行政区が変わるねん」。そうか、行政区の境界って、橋とか川ですからね。

めばさんとの雑談では、薬物依存の人々の会の持ち方の中にある「約束事」あたりについて聞くこともできて、これまたいい勉強になりました。

アスペルガーの方は「話すの苦手なんですけど、話しはじめるととまらなくて、どうしても長くなるんですよね」とおっしゃっていました。わたしが言うのもなんだけど、この人、ほんとうに長いんだもん(笑)。

造形作家の方、中学校時代ぜんぜん学校に行かなかったそうな。そのかわり、東大の先端研に出入りしていたとか。そのあたりから、必要な情報を自分で選択してそれをみにつけていくという手法を知らず知らずのうちに身につけていったそうです。この人の作品見たら、ほんとうにすごいです。おそらくは、筋肉の構造とかきちんと知っていないとつくれないんだろうけど、そういうものを、お仕着せではなく、自分の力で手に入れる手法を知っておられる。これって、まさに「学力」なんですよね。

「夢ってなんですか?」と聞かれた全盲の方。この方、盲聾のアクセスビリティについての研究開発をしておられるすごい人みたいなんですけれども、この質問には「はた」と困ってしまったそうな。
「僕、時間をつぶすのが苦手なんですよね。あと、ある場所からある場所への移動はできるんだけど、ブラブラ歩くのも苦手なんですよ」
なるほどなぁ。
「あぁ、オレって夢のない人間なんだと思ってしまいました(笑)」
うぅ〜む。

さて、今日もわたしは5回中5回出動。さすがに5回目は集中力も切れて、かなり疲れました。
でも、他には経験できない、ほんとうにすごい2日間を過ごさせていただきました。
すべて終わって、みんなで総括の話しあいの時間。2日前の顔合わせの時とはまったく違う、ほんとうに「近い」空気があたりに漂っていました。そして、いよいよ解散の時間。みんな動きません。なんだかんだと理由をつけて、動きません(笑)。それでもみんな帰らなくちゃなりません。ほんとうに別れを惜しみながら、なんども握手を繰り返し、それぞれの帰り道につきました。

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