読書感想文

先日、突然井谷惠子さんから「『オリンピックという名の虚構』を刊行した。献本したい」というメールが来ました。「へ?なんでわたし?」と思ったけど、オリンピックをジェンダーの観点で批判的にとらえる本は、もちろん読みたいので、ありがたくいただくことにしました。
で、もちろんいただいたら読まなきゃなりません。読んだら感想文を書かなきゃなりません。
ということで、読書感想文です。

とはいえ、ちょっとバタバタした毎日だったので、往復の電車の中で切れ切れに読みました。さらに、はじめの方は「オリンピック産業」にかかわる話で、あまりもドロドロのズブズブで、「まぁそんなもんだろうなぁ」という感じでした。
ただ、とてもおもしろいと思ったのが、あの本で一貫しているのは「スポーツ例外主義」という観点です。この「スポーツ例外主義」があるからこそ、経済的・法的・社会的に「例外」としてのスポーツが成り立ち、オリンピックが成り立っている。
そう考えたとき、学校の中にも「スポーツ例外主義」はあるよなと思うわけです。常識が通じない。「なぜ?」と問うと「体育は実技だから」「競技は男女別だから」「スポーツは規律が大切」とか、いろいろ出てきます。まぁだから上下関係がきっちりしていたり、体罰が起こりやすかったりするんだろうな。もちろん、みんながみんなそうなんじゃないけど、そういう構造があるってことです。
ちなみに、常識の通じなささでは、わたしもたいがいというか、下手するとわたしのほうがひどいわけですが(笑)、「なぜ?」と問われたときに「人権だから」とは言わない。きっと、人権とか差別とか言う言葉を使わずに説明を試みるんじゃないかな。
まぁいいや。
で、後半がおもしろいですね。とりわけジェンダーにかかわる話がおもしろい。
高アンドロゲン症の女性アスリートのことが、当然とりあげられるんですが、その背景には「正常な女性」観がある。その「正常な女性」は、白人女性なんですね。そこからはずれたひとつのモデルが高アンドロゲン症の女性である。だから、問題になる。てことは、そこにはジェンダーの問題だけでなく「人種差別問題」がからんでいる。
おぉ、インターセクショナリティ!
で、そことトランス女性排除の問題がからんでくる。
つまり、誰が正常な女性であるかということが、白人男性のまなざしを基準として決められる。そして、それを「女性」アスリートもまた支持する。なぜなら、白人男性のまなざしに「合格」したからこそ、女性アスリートとして活躍する場を与えられ、そこで優れた成績を残しているからです。そして、なぜそんなことが可能となるかというと「スポーツ例外主義」があるんですよね。
まぁこういう話を考えるにつれ、学校体育の問題とトランス女性排除の問題は根っこがつながっているんだなぁと、つくづく思いました。
とにかく、オリンピックとかスポーツとかへのまなざしが変わるという意味で、まさに「今」読むべき本のうちの一冊かなと思いました。

というのは、昨日の話。いや、読み終えたのが昨日で、それを考えたのが昨日から今日ってことです。
で、今日は今日で、「大人買いしたいな」と思っているマンガを探そうと、ちょこっと古本屋に入ったら、いきなりありました。

即買いです。
家に帰ってボチボチ読みはじめたけど、おもしろい!そして深い。校訓が「勤労・協同・理不尽」というのが、すごい。読み進めるのが楽しみなマンガです。