歴史的和解

で、当然のことながら、呑み。
向かいに座ったのはgidmediaの人。このグループ、「元祖キラキラ系」かなと思っていたら、案外地道にやっておられることがわかって、なかなかおもしろかったです。なんか、意気投合して、「そのうち全国トランスジェンダー生徒交流会をしよう」とか言っちゃいました。元気が出たな。
あと、別のところでセミナーやっておられて途中から来られたここの村木さん。こちらも「キラキラ」に走ってるのかなと思ったら「根っこは変態だけど、がんばってフリしてるんだよ!」ってタンカ切られて、思わず「ごめんなさい、ごめんなさい」。で、握手。

にしてもWかちゃん、言ったんだ。結果的にはおかげさまでよかったけど(笑)。

ちなみに、村木さん、トランスのトイレ問題をしなくちゃと思っておられるみたいなんですけど…。三橋さんと話をしたのは「そっとしといて」なんですよね。あの裁判そのものは、問題提起として貴重だと思うし、問題を顕在化させたという意味では大切だと思います。が、それが朝日新聞がいうような「全国統一のガイドライン」なんかつくられた日にゃ、下手すると「うまくやってる人」が後退しちゃうことになる。まぁ、そのあたりは朝日新聞の記者が「わかっていない」ということになるかな。
という意味では、「うまくやってる事例」を出して、「それはその人が特殊」って考えるんじゃなくて、まわりの人の理解というか受けとめというか、そんなのがあるんだってことを示していくことも大切かもしれませんね。

もう身体のことはいいと思う

今日は関西GIDネットワークのセミナーです。てことで、岡山から大阪へ。少し遅れて会場に入ると、三橋さんの話の最中でした。
三橋さんの話は、日本の仏教の中に見る性別移行という感じです。基本的には『女装と日本人』の中で語られていることですが、今回は観音にまつわる話が特に多かったかな。あと、僧侶の転性の話も新しかったかな?なんしか、豊富な知識と深い論考は「すごい」のひとことです。すごくおもしろかった。
で、高垣さんの話。こちらもすごいというかマニアックというか。三橋さんが「歴史」という縦糸ならば、高垣さんは「民族誌」という横糸という感じ。なんしか、縦横無尽に「野」を駆け巡る。そして、いろんな人にインタビューした成果から論考したことを語ってくださいました。
で、質疑応答を聞きながら、いろんなことを考えました。
基本的に、おふたりのスタンスは違います。それは「歴史」と「民族誌」という意味ではなく、トランスのスタンスです。三橋さんは、基本的には身体加工には言及されません。あくまでも、「社会的な役割」に話をとどめます。に対して、高垣さんが聞き取りをした場所はタイ。特に病院です。当然のことながら「手術をする/した人」が多い。勢い、身体加工にまつわる話が多くなります。で、これはおそらくはおふたりのトランスのスタンスと一致しています。
で、こういうおふたりが話をされると、どうしても微妙な「ズレ」が出てきてしまう。そこに質疑応答をする人の関心事がからむ。で、それがこれまあ「身体加工」にまつわる話がどうしても出てきてしまう。例えば特例法の手術要件の話とか、手術関係の「知識」のこととか。なので、どうしても話の内容がそちらへそちらへと動いていく。
で、それを聞きながら「これ、違う方に行ってるなぁ」と、ずっと考えてました。
例えば、「特例法の手術要件をはずしたら公衆浴場はどうなる」とかいう質問が出ましたが、わたしにはさっぱりわからない。だって、手術して戸籍男の人と手術してなくて戸籍女の人がいたとして、公衆浴場に入るときどちらが自然かというと、手術して戸籍男の人なんじゃないかと、わたしは考えます。たぶん、先の質問者は、その前提として「手術→戸籍の変更」というステップでものを考えているんじゃないかな。だから、手術要件をなくすというのは「ステップを減らす」となる。でも、わたしはふたつが完全に独立しているので、その場その場に必要なことが満たされていればいいと考える。
同じようなことが、「伝承」にかかわる話でもありました。高垣さんは「身体加工にまつわる伝承は不要」とバッサリ。なぜなら、「それはリテラシーの問題である」ということなんです。わたしもそれは同意です。なぜなら、身体加工の問題は自己満足というか趣味というか、そういう領域のことで、それは「知識」の問題でしかないと思っているからです。でも、「社会的な役割」は違う。これは「技術」の問題です。技術は得るものではなく習得するものです。こちらは伝承が必要になる。
で、三橋さんがずっとずっと言い続けてきたのは、まさにこのことなんです。でも、それが出てこない。最後の最後、たまりかねて質問というか呼び水というか、そんなあたりのことを三橋さんに「ですよね?」って問いかけちゃいました。
てなことはあったにしろ、おもしろかったのは、タイのトランス男性、手術してない人がほとんどってことでした。手術が技術的に難しいということと、手術なしでQOLの向上が得られるというのが、その根拠のようです。まぁ、このあたりも手術要件のこととからめて考えるとおもしろいでしょうね。