徳島に来るたび、とにかく食べたいと思っていたのが「イリカスのお好み」です。
前にも書きましたが、「イリカス」は「油かす」とは少々違います。油かすは小腸・大腸を炒って、さらに自分自身の油で揚げたものです。それに対して、イリカスは、いろいろな部位が入っています。なので、「イリカスのお好み」は、根本的に別物と考えていいと思います。
ところで、徳島ならどこでも食べられるかというと、どうもそういうわけではなさそうです。特に徳島西部ではホルモンもなかなか手に入らなかったようです。例えば「ひっかり雑炊」をつくる時、東部であればイリカスやスジでダシをとりますが、西部ではダシなしで炊いたとか。やはり、新鮮な肉が入手できるルートがあったかどうか、あるいは、経済的にどうだったかというような「差」が、同じ県内でもあったようです。
噂では吉野にもイリカスのお好みはあるとのことですが、やはり本場は不動のようです。
店にはいると、いかにも地域のお好み焼き屋さんという感じ。店内のメニューを見てもそれらしきものがありません。「マメのお好み」とありますが、これはホルモンの「マメ」じゃなくて煮豆のことです。で、
「イリカスのお好みできますか?」
とたずねると、当然のように
「できますよ」
という答え。もう、ワクワク感が一気に高まります。思わず
「イリカスのお好みが食べたくて来ましてん」
とアピールしてしまいました。ちなみに
「ビール」
と頼むと
「ビール、嫌いやさかいにあらへんねん」
とのこと。で、
「持ち込みしてもいいですか?」
とたずねると
「ちょっとだけやったらええで。そこの角を曲がったところに自動販売機があるわ」
とのこと。もちろん買いに行きましたとも(笑)。
店のおばちゃん曰く。
「うちのお好みはなつかしい味やで」
どうやら徳島はもともとはベタ焼き系だったのが、最近では混ぜ系が増えてきているようです。たしかにこの店のお好みはベタ焼き系です。
ちなみに、ところどころにある黒かったり白かったりするものがイリカスです。完成品は、まぁいわゆるベタ焼きです。今回はお皿に入れてもらった関係で、食べやすいように切ってくださいました。
でも、そのおかげで、断面にイリカスが見えます。
味の方は…。
すごいダシです!
油かすの場合は、食感と香りと脂のうまみが醍醐味なんですが、イリカスは食感と香りとダシが醍醐味になります。食感については、油かすのパリフワトロに対して、モッチリ系になりますか。香りはホルモンの部位によってさまざまです。そして、なによりダシ。これはすごいです。思わず
「あぁ、しあわせ…」
とつぶやいてしまいます。
わたしを連れてきてくださったK野さんは、もちろんこのあたりのセンターや祭に日常的に出入りしておられるので、おばちゃんとそういう話をします。すると、おばちゃんも最初の「こいつらなにもの?」状態から、徐々にうち解けてこられます。やっぱり、地元を知っている人と行くと、そのあたりがぜんぜん違いますね。
おばちゃん「センターのイリカスは豚や」
K野さん「いや、あそこ、中村中山で仕入れてはるみたいですよ」
おばちゃん「中村中山か、ほんなら牛やなぁ。まぁ、一口食べてわかる人はよほどの通やで」
K野さん「そうですね」
深いぃです。
で、お勘定。
「え〜と、イリカスのお好みが400円で、モダンが500円ね」
安いです!たしかに、壁に貼ってあるメニューを見たら、「お好み250円150円」とか、異様な安さです。
もちろんこの味を子どもたちに食べさせたいと思い、中村中山でイリカスを買いましたとも!
てことで、恒例のdata
イリカス玉お好み | 400円(モダンは100円増し) |
ビール | 近くの自動販売機 |
スタイル | ベタ焼き系 |
その他 | とにかく安い!しかもおいしい!バリエーションもたくさんあります。徳島名物「マメのお好み」も試してみる価値はあるかと…。 |
独断的評価 | ★★★★★(本文にも書いたように、「イリカス」は「油かす」とはまったく違うものと考えていいと思います。なので、比較のしようがないですが、絶対的評価としては、やっぱりこれでしょう) |
<追記>
K野さんから間違いを教えてもらったので訂正しました。
あと、詳細なリンクも更新しました。